日常の中の著作権

こんにちは! パーチェ特許知財事務所の弁理士 田邉陽一です。
さて、先日、幼稚園児の息子から、
『パパ、お仕事の机に置いてね!』と、
プレゼントをもらいました。
『???』
※↓これ何か分かりますか?

憎めないキャラクター風の物体ですが、
何か良くわかりません。
強いていえば、「ド〇クエ」で「ス」がつく
有名なモンスターに見えますけど、
うちにはゲームないから、
あのキャラクターを知らないはずでございます。
息子に答えを聞いてみると、
『クラゲ型の風鈴』(!)
ということでした。
なるほど!
 良く見ると、足が複数ついていて、
中に「鈴」と「風受け」がありました。
なんとなく、癒される感じでかわいいので、
仕事机にオブジェとして、飾ることにしました。
1.著作物になります
さて、この『クラゲ型の風鈴』ですが、
子供が創作して完成させたものですが、
実は、れっきとした著作物となります。
著作権法第2条1項
 『思想又は感情の創作的表現であって、美術等に属するもの』
という定義があります。
また、「幼児の創作」にも著作物性が認められますので、
この風鈴は、れっきとした著作物に該当になります。
『著作権法』は、無方式主義(※コピーライトアプローチともいいます)
を採用していますので、
『文化庁への登録』をすることなく、
創作時において、権利が発生いたします。
(※文化庁への登録行為は、権利発生に必要な行為ではなく、
  第三者への権利関係の対抗するための手続になります。)

  著作者: 息子
  著作権者: 息子

(こう見ると、大げさなものです。)

2.著作物の利用

さて、この風鈴ですが、私が写真撮影し、
ブログに写真をアップしました。
何気ない行為のようですが、実は、これを無断でやってしまうと、
著作権法の侵害となってしまいます!
(※実際に権利行使するかは別としてですが。)
 具体的に見ます。
(1)著作物である造形物の写真の撮影は、
  有形的再生なので「複製」に該当します。
  この場合、三次元のものを二次元に
  有形的に再生しているので、厳密には複製でない可能性がありますが、
  「変形・翻案」による「二次著作物の利用」に
  該当する可能性があります。
  また、ブログでのアップを行っていますので、
  家庭内使用目的に該当せず、複製権の適用除外規定も適用されません。
(2)また、写真をブログにアップする行為は、
  「公衆送信権」のうちの送信可能化に該当します。
(3)また、この風鈴は、未公表の美術の著作物に該当しますので、
  息子の著作人格権である「公表権」の侵害にもなりそうです。
3.法定代理人
あと、この事例でもう一つ挙げる項目がありました。
息子は、未成年者(5才)ですので、
独立して法律行為ができません。
「著作権の利用」は、法律行為になりますので、
法定代理人の同意が必要となります。
今回は、息子の法定代理人である妻(もう一人の法定代理人)
と息子(本人:ただあまり分かってはいない?)の許可をとって、
掲載しました。
よく考えると、このような行為は、日常的に皆やっている行為と思います。
幼児の工作を写真でとって、ブログに上げただけなのに、
大層なことになってきましたね。
4.著作物の経済的価値
今回の事例は、幼児の工作の家族間での利用行為ということですので、
問題になることはあまりないケースとは思いますが、
 例えば、

 ・有名な漫画家の原稿(『美術及び言語著作物』)を
 ・写真撮影(『複製』又は『変形・翻案による二次利用』)して、

          (→上記(1)と同じ行為)
 ・ブログにアップ(『公衆送信権の送信可能化』、『公表権の侵害』)
  したら、、

          (→上記(2)と同じ行為、上記(3)の権利) 
もうお分かりと思いますが、
論点としては、今回のケースがそのまま当て嵌まるのですが、
『著作物の経済的価値』の違いによって、
その社会的な結果は、極めて大変なことになってしまいます。
(少し前、発売前の人気漫画を、販売員の方がブログにアップしてしまい、
 公衆送信権の侵害に問われてしまった事件が報道されていました。)
… 今回は、身近な「著作権」についての話題を書いてみました。
だんだん、涼しくなってきましたので、
皆様もスポーツ、読書、食事など、
どうぞ楽しくお過ごし下さい。
(この風鈴ですが、夏が過ぎても、
オブジェとして飾っておこうと思います。)
それでは、また、近いうちに更新したいと思います。

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