こんにちは。パーチェ特許知財事務所の弁理士 田邉陽一です。
最近、めっきり寒くなってきましたが、
皆様もお元気でお過ごしでしょうか?
先日より、幣所のスタッフも
このブログの原稿を書いてくれることになりました。
そこで、今回からは、
私の方では少し専門的な内容や新着情報を
投稿してみたいと思います。
1.今日は、少し前の裁判例ですが、
米国の『Myriad米国連邦最高裁判所判決(2013年6月13日)』
という遺伝子特許の判例について、ご紹介したいと思います。
この判例は、米国のバイオベンチャー企業のMyriad社が保有する
「BRCAという乳がんの癌抑制遺伝子」
に関する特許につきまして、米国連邦最高裁判所が、
米国での遺伝子発明の発明適格性を判事した判例です。
この判例で明確になった点は、
「単離されたDNA」の発明適格性(Patent Eligibility 35USC 101条)
につきまして、次のような明確な判断が示された点です。
1)「天然の遺伝子」(例えば、野生型のゲノムDNA等)は、
自然に存在する天然物に過ぎないため、
米国特許の特許適格性要件を充足しない。
2)一方、「人工的に合成したDNA」は、
自然界に存在しない配列のDNA
(例えば、イントロンを除去して合成したcDNA等)であれば、
米国特許の特許適格性要件を充足する。
米国での遺伝子特許に関しまして、
i ) 天然のゲノムDNAは、発明適格性を満たさないが
ii) 一方でcDNA配列や人工的な変異配列は発明適格性を満たす
ということが明確になった判例と認められます。
2.なお、上記判例は、「米国特許」に関する裁判例になります。
現在の「日本の特許庁」の審査では、
「単離した化合物等」につきまして、
「天然物から人為的に単離されたもの」である場合、
発明(自然法則を利用した技術的思想)に該当すると認められています。
この点、「日本特許」では、「単離されたDNA」に、
有用性(産業上の利用可能性)や
その他の特許要件(新規性・進歩性等)を満たすことで、
遺伝子特許が認められています。
11月もあとわずか。
どうぞ皆様お元気でお過ごしくださいませ。
(written by 田邉陽一)