こんにちは、パーチェ特許事務所の弁理士 田邉陽一です。
今回は遺伝子関連発明に関する実務的な話題です。。
遺伝子関連発明の特許出願では、塩基配列やアミノ酸配列を特定した技術内容(遺伝子やタンパク質等)を明細書の実施例に「1つ」開示した場合、、
請求項に記載する発明の範囲として「その配列そのもの」に加えて「類似範囲にある配列」が認容される場合があります。
この場合、請求項の発明は、実施例(実験結果)に開示された配列に対して「配列同一性**%以上」を示し且つ「機能特定」を示す包括的な表現として、「類似範囲」を表現することが可能となるのですが、、
この「配列同一性**%以上」の数値がどの程度まで許容されるのかが、悩ましい問題となります。
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特許庁JPPで特許が認容された登録例を調べますと、、
類似配列を示す範囲が「配列同一性90%台」の場合に登録件数が「多くヒット」するようなのですが、、但し、件数は少ないながら「80%台」の登録例も見られました。これは運用基準の変遷が影響しているのか、配列部分が発明の付加的な特徴に過ぎないケースなのかは不明でした。。
、、最近、私が実際に担当した案件では、
出願時に記載した「85%以上、且つ、機能特定」では実施可能要件等の拒絶理由が指摘されたのですが、「90%以上、且つ、機能特定」に補正したところ特許性が「認容」されたケースがありました。。
類似配列に関する機能特定の実施例や明細書本文の記述とも関連してくるかと思いますが、この辺りの数値に類似配列に関する実施可能要件の境界線があるのかもしれません。
(※但し、ケースバイケースで判断されている可能性もありますので、一概には言えないのかもしませんが、、。)
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最近、知財・科学関係で気になった話題です!
● 東京地判平成9(ワ)938号 損害賠償等請求事件(カビキラー事件:経時変化する成分に関する侵害を認容した事件)
ジョンソンによるカビ取り剤「カビキラー」について、花王が有する「芳香性液体漂白剤組成物」の特許権を侵害するか否かが争われた損害賠償等の請求事件です。少し古い判例ですが、製造時点での前駆物質が経時変化によって対象物質に変化した場合の侵害を認容した裁判例で、「組成物」に関する特許発明の権利範囲を考える上で実務的に興味深い内容と思いました。
(Written by 田邉陽一)
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