こんにちは、パーチェ特許事務所の弁理士 田邉陽一です。
生物の表現型や遺伝的特性を容易に識別する手法として、ゲノムDNA中のSNPsやInDel情報等を「DNAマーカー」として利用する手法があります。。
この技術では、DNAマーカーを利用したPCRプライマー(オリゴヌクレオチド)や識別方法が遺伝子関連発明となることから、その生物(例えば、農作物や園芸植物の変種や品種等)で変異遺伝子や連鎖関係にあるSNPsやInDel等を新規に見出した場合には、特許出願が可能と考えられますが、、
、、但し、次世代シーケンサー等のゲノム解析技術が劇的に進歩発展している現在においては、標準種(代表的な品種等)のゲノム基本情報やSNPsやInDel等のローカス情報がデータベース等で公知である場合があり、、この場合、進歩性欠如等の拒絶理由が指摘される可能性が考えられます。。
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この点、事案によってケースバイケースとは思いますが、例えば、、
・ローカス情報のみでは「その特定の遺伝子型と表現型との関係性」が把握できないことの論理的な説明、
・識別精度の向上が可能な場合には「複数の多型情報の組み合わせ」、
・既存のローカス情報では対象形質を精度良く識別できないの「比較例」、など、、
出願準備段階から拒絶対応に有利になる情報を発明者の方から伺って、明細書に記載しておくことが鍵になる場合があるように思います。発明に関するコミュニケーションが特に大事になる場面かと思います。。
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最近、知財・科学関係で気になった話題です!
● 遺伝子組み換え困難な細菌を遺伝子組み換えしやすく改変 ~JST、長浜バイオ大学、名古屋大学
Acinetobacter属という細菌の系統について、遺伝子組み換えを困難にしている外来DNAに対する防御機構を解明して2つの制限酵素遺伝子を欠損させた株(Tol5変異株)を作出したところ、エレクトロポレーション法による遺伝子導入効率が約5.7万倍向上したとの報告です。得られたTol5変異株に関する知見は、他の遺伝子組み換え困難な細菌へ適用が期待されるとのことです。
、、エレクトロポレーション法は、多くの生物に適用可能な遺伝子導入法と思われますが、生物種によってはそれ自体の外来物質防御機構と関連している点、興味深いと思いました。。
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